労災事故は、大きく分けて、①他の従業員や第三者の不注意によってケガをした場合と、②自分一人でケガ(や病気)をした場合に分かれます。
①は、例えば、他の従業員がフォークリフトで作業をしていたところ、被災者の存在に気付かずにフォークリフトで被災者を轢いてしまった場合、他の従業員がうっかり上から物を落として下にいた被災者に当たってケガをした場合など、第三者の不注意が直接の原因で負傷をした場合です。
②は、例えば、プレス機で作業中に誤って手を挟んでしまったり、建設現場で足場の移動中に落下したりする場合などです。
①他の従業員や第三者の不注意によって被災した場合
ケガの原因となった他の従業員や第三者に対しては、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求が可能です。
そして、同じ職場の他の従業員である場合は、使用者である会社に対して、使用者責任(民法715条)に基づく損害賠償請求が可能です。
これにより、労災保険では請求できなかった部分(例えば、休業補償の20%分や精神的慰謝料)を請求することが可能となります。
②自分一人で被災した場合
この場合は、会社に対して、安全配慮義務違反として債務不履行に基づく損害賠償請求を検討することになります。
①に比べて、会社が「自損事故であるため会社には責任がない」と請求を拒否するケースが多いです。
その理由は、安全配慮義務違反の内容が定型的ではなく不明確だからです。
どのような場合に、会社に対して安全配慮義務違反が問えるのでしょうか。
安全配慮義務は、業種、作業内容、作業環境、被災者の地位や経験、当時の技術水準など様々な要素を総合的に考慮してその内容が決まります。
そのため、具体的な被災状況をお伺いしてからでないと、会社に対して安全配慮義務違反を問えるかどうかは分かりません。
もっとも、概括的に言えば「教育不足が原因で被災した」または「会社の管理支配する場所で、会社から提供された機械や道具が原因で被災した」場合には、安全配慮義務違反を問いやすいと言えます。
具体的には、労働者の安全対策として「労働安全衛生法」と「労働安全衛生規則」が定められておりますが、その条文に違反するような状況下で事故が起きたのであれば、安全配慮義務違反を問いやすいと言えます。
会社に対して、安全配慮義務違反を追及したいとお考えの方は、一度、ご相談ください。
具体的な手続き
①にせよ、②にせよ、会社に対して損害賠償請求を検討する場合、まずは資料を集めていただくことになります。事故状況が分かる写真等の資料があればとても助かります。
次に、労災保険での資料を取り寄せていただくことになります。
労災保険にて提出した資料や労災保険が決定した内容の資料については、当該労働基準監督署を管轄する「労働局」で「保有個人情報公開請求」という制度に基づいてコピーを入手することが可能です。なお、労災の資料の入手には、申請してから1月ほどかかります。
こうした資料をもとに、事故状況と認定された後遺障害の内容等を判断し、損害額を計算します。
その後、内容証明郵便で会社に通知書を送ります。
そして交渉を試み、話し合いで解決できなければ訴訟提起となります。