労災事故で大きな怪我を負った場合、治療費や休業補償だけでは補いきれない「将来の収入の減少」が生じることがあります。
この“将来得られたはずの収入”を金銭に換算したものが、逸失利益(いっしつりえき)です。
交通事故の解説は多く見かけますが、労災事故の逸失利益には、労災特有の制度・計算方法・注意点が存在します。
本記事では、労災の逸失利益について、弁護士が具体例を交えてわかりやすく解説します。
1 労災事故の逸失利益とは?
逸失利益とは、労災事故によって労働能力が低下したり、死亡したりしたことで、将来得られなくなった収入を金銭評価したものです。
労災事故では、
・労災保険からの補償
・会社への損害賠償請求(安全配慮義務違反)
の二本立てで検討する必要があります。
2 逸失利益の種類
① 後遺障害逸失利益
事故によって後遺障害が残り、労働能力が低下した場合に請求できます。
後遺障害逸失利益のポイント
労働能力喪失率(労災等級に応じて決まる)
労働能力喪失期間(一般に67才まで)
基礎収入(事故前年の年収が原則)
労災事故では、労災等級(1〜14級)と自賠責等級(1〜14級)が異なる点に注意が必要です。
② 死亡逸失利益
被災労働者が死亡した場合、遺族が請求できます。
3 逸失利益の計算方法とは?
① 後遺障害逸失利益の場合
具体例1(12級、症状固定時48才の場合)
年収:400万円
労働能力喪失率:14%(12級)
労働能力喪失期間:20年(67才まで)
ライプニッツ係数:14.8775(20年に対応する係数)
→結論
400万円×0.14×14.8775=8,331,400円
具体例2(1と同じ条件で、11級の場合)
労働能力喪失率20%(11級)
→結論
400万円×0.2×14.8775=11,902,000円
ポイント
上記のように、等級が1つ違うだけで数百万円単位で金額が変わることも珍しくありません。
② 死亡逸失利益の場合
具体的な計算例(死亡時48才の場合)
年収:400万円
生活費控除率:30%(扶養家族ありの場合)
就労可能年数:20年(67才まで)
ライプニッツ係数:14.8775(20年に対応する係数)
→結論
400万円×(1-0.3)×14.8775=41,657,000円
ポイント
死亡逸失利益は金額が大きくなるため、生活費控除率や基礎収入の扱いが争点になることが多いです。
4 労災から受け取れる補償
(1)労災事故では、労災保険から次の補償が受けられます。
・療養補償給付(治療費)
・休業補償給付(給付基礎日額の60%+特別支給金20%)
・障害補償給付(後遺障害)
・遺族補償給付(死亡)
・葬祭料
・介護補償給付
(2)後遺障害に関するもの
労災保険の「障害補償給付」が後遺障害についての補償です。
具体的な計算方法は、以下のとおりです。
・14級の場合、給付基礎日額×56日分
・12級の場合、給付基礎日額×156日分
・10級の場合、給付基礎日額×302日分
5 会社への損害賠償請求ができる場合
労災事故の原因が会社の 安全配慮義務違反 にある場合、労災保険とは別に 会社へ損害賠償請求 が可能です。
典型的な安全配慮義務違反の例
• 危険な作業を放置していた
• 安全装置を設置していなかった
• 過重労働を強いていた
• 適切な指導・監督を怠った
• ハラスメントを放置していた
具体例
フォークリフト作業中、会社が定めた誘導員配置ルールを守らず、衝突事故が発生。
会社の管理体制に問題があるとして、逸失利益・慰謝料などの損害賠償が認められたケースがあります。
6 労災を弁護士に相談するメリット
労災事故は、交通事故よりも制度が複雑で、会社との関係性も絡むため、専門的な判断が必要です。
弁護士に相談するメリットは、以下のとおりです。
・労災保険と損害賠償の両面から最大限の補償を検討できる
・労働能力喪失率・基礎収入などの争点を適切に主張できる
・会社との交渉を任せられるため精神的負担が軽くなる
・証拠収集(安全配慮義務違反の立証)をサポート
・後遺障害等級の獲得を支援
7 当事務所のサポート内容
当事務所では、労災事故に精通した弁護士が、次のようなサポートを提供しています。
・労災保険の申請サポート
・後遺障害等級認定のサポート
・会社の安全配慮義務違反の調査・立証
・逸失利益・慰謝料など損害額の算定
・会社・保険会社との交渉
・訴訟対応
8 まずは弁護士にご相談を
逸失利益の請求は、労災申請にせよ、会社に対する損害賠償にせよ、被災された労働者の今後の生活のために極めて重要です。しかし、申請手続き、会社対応、後遺障害、損害賠償など、専門的な判断が必要な場面が多くあります。
早期に弁護士へ相談することで、受け取れる補償額が大きく変わる可能性があります。
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