１ アスベストとは？
アスベストとは、天然に採取される鉱物の一種です。
鉱物でありながら軽い綿状の性質を持つことから、石綿（せきめん、いしわた）とも呼ばれます。
アスベストには次のような特性があります。
・しなやかで糸や布に加工しやすい
・引っ張りに強く、摩擦・摩耗にも強い
・高熱に耐え、燃えにくい
・熱や音を遮断できる
・薬品に強く、電気を通しにくい
・細菌や湿気に強い
・他の物質との密着性が高い
・安価である
こうした特性から「奇跡の鉱物」といわれ、特に断熱材・保温材・防音材などの建材として広く使用されてきました。
２ アスベスト制限の歴史
便利な特性を持つアスベストですが、吸入すると肺がんや悪性中皮腫などの重篤な健康被害を引き起こすことが判明しました。
そのため、日本では現在アスベストの使用が禁止されています。
以下に、全面禁止になるまでの歴史を振り返ります。
1960年（昭和35年） じん肺法の制定
アスベストの使用自体は制限していませんが、粉じん作業に従事する労働者への定期健康診断を義務付けるなど、健康被害対策の先駆けとなりました。
1971年（昭和46年） 特定化学物質等障害予防規則の制定
アスベスト関連作業における安全対策が明記され、労働者の安全と健康を守るための規制が導入されました。
1972年（昭和47年） 労働安全衛生法の制定
アスベストによる健康被害の増加を受け、健康診断費用の負担軽減を目的とする「健康管理手帳制度」が導入されました。
1975年（昭和50年） 特定化学物質等障害予防規則の改正
アスベストの吹き付け作業に関する規制が強化され、石綿含有率5%以上の建材を使用した吹き付け作業が禁止されました。ここから本格的なアスベスト規制が始まりました。
1995年（平成7年） 労働安全衛生法施行令の改正
発がん性の高い「アモサイト（茶石綿）」と「クロシドライト（青石綿）」の製造・輸入・提供・使用が禁止されました。また、吹き付け作業の規制対象が石綿含有率1%以上の建材に拡大されました。
2004年（平成16年） 労働安全衛生法施行令の改正
石綿含有量1%以上の建材、摩擦材、接着剤など10品目の製造・輸入・提供・使用が禁止されました。
2006年（平成18年） 労働安全衛生法施行令の改正
石綿含有量0.1%以上の製品の製造・輸入・提供・使用が禁止されましたが、一部の製品には猶予措置が設けられました。
2012年（平成24年） 猶予措置の撤廃
すべての石綿含有製品（0.1%以上）が禁止され、日本におけるアスベスト使用は全面的に禁止されました。
３ アスベストが原因で発症する疾病
アスベストの繊維は非常に細かく、空気中に飛散しやすいため、吸い込むと肺に沈着し、長期間滞留することで様々な疾病を引き起こします。代表的なものは以下のとおりです。
① アスベスト（石綿）肺
長期間のアスベスト曝露によって発症するじん肺の一種。
特徴的な症状として、肺の線維化が進行し、呼吸機能が低下します。
② 肺がん（原発性肺がん）
アスベスト吸入によって発生する肺がん。曝露量が多いほど発症リスクが高まります。
③ 悪性中皮腫
主に胸膜や腹膜に発生する悪性腫瘍。少量の曝露でも発症することがあり、アスベストが主な原因とされています。
④ びまん性胸膜肥厚
アスベスト曝露により胸膜が線維化・肥厚し、呼吸機能が低下する疾患。
⑤ 良性石綿胸水
胸膜の炎症により胸水がたまる病気。他の胸水の原因（がんや結核など）がない場合に診断されます。
４ 発症するまでの潜伏期間
（１）アスベストに関連した健康被害は数日や数か月後に出現するというものではなく、長い年月が経ってから発症します。
厚生労働省によると、以下の潜伏期間があるとされています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/sekimen/topics/tp050729-1.html
① 石綿（アスベスト）肺 １５～２０年
② 肺がん １５～４０年
③ 悪性中皮腫 ２０～５０年
（２）この潜伏期間を理解することは非常に大事です。
つい最近（あるいは数年前）、肺がんや中皮腫と診断されたが、アスベストに曝露したと思われる作業に従事していたのは何十年も前なのにこれが原因なのだろうか？、と疑問に思っている方もいらっしゃると思いますが、潜伏期間から考えて、発症するのは作業従事後、相当に時間が経ってからなのです。
５ 救済制度
アスベスト被害のために、国は労災保険金の支給をはじめとする救済制度を設けています。
当事務所では、アスベスト被害に関する相談を承っております。
初回相談料は無料です。
お一人で悩まずに、まずは、お気軽にご相談ください。
03-6277-8802
メールやLINEでも相談可能です。