1 フォークリフトによる労災事故と損害賠償の対応方法
フォークリフトによる労災事故にまきこまれた場合、まずは労災保険を利用し、その後、会社に対して安全配慮義務違反による損害賠償請求を検討します。
順を追って説明していきます。
2 フォークリフトの労災事故とは?実態と典型事例
まず、フォークリフトの労災事故ですが、運送業、倉庫業、製造業といった物流に関連する業種において、多く発生しています。(運送業は、トラック等の運転中の事故がイメージしやすいですが、実は交通事故よりも荷の搬入出時の事故が非常に多いというのが実態です。)
フォークリフトの労災事故として、次のような事例が挙げられます。
① 接触・激突事故
倉庫において、作業中の労働者が、移動してきたフォークリフトに接触・激突されて負傷した場合
フォークリフトに荷物を積載している場合、視界が不良になることから、このような事故が発生しやすいです。
【ポイント】ケガを負った労働者に過失があっても労災保険は適用されます。会社が「君に過失があったよね。だから労災保険は使えません。」と言われても労災保険は利用できます。
② 墜落事故
フォークリフトのフォークに差し込まれたパレットの上に労働者を乗せて作業させていた際に、労働者が墜落して負傷した場合
労働安全衛生法令上、フォークリフトは「車両系荷役運搬機械」の一つとして定義されており(労働安全衛生規則151条の2)、作業計画の策定、作業指揮者の指定、接触防止、立入禁止、用途外使用の禁止、運転資格の定めなど各種の規制があります。
労働者をフォークリフトに差し込んだパレットの上に乗せることは、用途外使用になります。
【ポイント】パレットの上に労働者を乗せて作業させることを会社が指示していた場合等は、法令違反を指示していたわけですから、会社には安全配慮義務違反が認められる可能性があります。
③ 挟まれ事故
フォークリフトのエンジンを停止せずに、フォークリフトから離れたところ、無人のフォークリフトが動き出し、フォークリフトと棚の間に挟まれて、労働者が負傷した場合
労働安全衛生規則151条の11において、フォークリフトから離れる時には、エンジンを止め、ブレーキを確実にかけるなど、フォークリフトが無人で走行しないように防止をしなければなりません。
【ポイント】この事案も法令違反ですから、例えば、会社がこの点の注意喚起を徹底していなかった場合等は安全配慮義務違反が認められる可能性があります。
このように、フォークリフトの労災事故では、フォークリフトに接触・激突されたり、フォークリフトからの転落・墜落、フォークリフトに挟まれるといった類型が多いです。
3 労災保険の申請と補償内容
(1)労災保険の適用要件
不幸にも、フォークリフトによる労災事故に巻き込まれた場合には、必ず、労災保険を申請してください。
労災保険の対象となるためには、「業務遂行性」と「業務起因性」の2つが要件となりますが、仕事をしている最中にケガを負った場合には、これら要件が認められることになります。
また、上記のとおり、ケガをした労働者に過失があったとしても、労災保険は利用できます。
(2)補償内容(治療費全額支給、休業補償)
フォークリフトによる労災事故が労災(業務災害)と認定されれば、労災保険から、治療費が全額支給されます。
治療のために、会社を休業している期間、給料の約8割が支給されます。
そのため、安心して治療に専念できます。
(3)後遺障害(等級に応じて年金または一時金)
労災事故によるケガの治療を続けていたものの、これ以上、現在の医学では、症状が改善されない時がきます。
これを、症状固定といいます。
症状固定時点で残った症状が労働能力の喪失を伴う場合、それを後遺障害といいます。
労災保険では、1級から7級までの後遺障害の認定がされた場合には、年金が支給され、8級から14級までの後遺障害の認定がされた場合には、一時金が支給されます。
後遺障害が残った場合、労災保険から、年金または一時金が支給されることで、後遺障害によって、労働能力が失われたことによる収入の減少に対する補償がなされ、今後の生活が安定します。
(4)死亡事故(遺族補償年金)
フォークリフトによる労災事故によって、不幸にも、死に至った場合、ご遺族は、労災保険の遺族補償給付を受給できます。
遺族補償給付を受給できれば、2ヶ月に1回、労災保険から、年金が支給されますので、残されたご遺族の生活の安定につながります。
(5)重要
このように、フォークリフトによる労災事故に巻き込まれた場合、今後の生活の安定のために、速やかに労災申請を行いましょう。
4 労災申請を弁護士に依頼するメリット
労災申請をするには、①会社に手続を代行してもらう、②ご自身で労働基準監督署へ行って手続をする、③弁護士に労災申請を依頼する、の3つの方法が考えられます。
特に、後遺障害の申請に当たっては、適切に等級を認定してもらうために、弁護士に依頼することをおすすめします。
また、会社に安全配慮義務違反があるので会社に損害賠償も検討したいと考えている場合には、労災の申請書に、労災事故の発生状況を正確に記載する必要があることから、早期に弁護士に依頼することをおすすめします。
福崎法律事務所では、後遺障害認定、会社への損害賠償請求について、豊富な経験と実績がございます。ご相談者様のお話を丁寧にお伺いし、最善の解決策をご提案いたします。
初回のご相談は無料です。まずはお気軽にお問い合わせください。 【03-6277-8802】
5 会社への損害賠償請求の可能性
(1)安全配慮義務違反とは?
労災保険からは、労災事故によって被った精神的苦痛に対する慰謝料は支給されません。
また、後遺障害による収入の減少に対応する労災保険の障害補償給付や、労働者の死亡による収入の喪失に対応する労災保険の遺族補償給付では、労働者の将来の収入の減少・喪失という損害が、全てまかなわれるわけではありません。
このように、労災保険からは支給されない慰謝料や、労災保険からの補償では足りない、労働者の将来の収入の減少・喪失の損害について、会社に対して、損害賠償請求ができないかを検討します。
すなわち、フォークリフトによる労災事故について、会社が安全対策を怠っていた場合、会社に対して、損害賠償請求ができる可能性があります。
(2)安全配慮義務違反の具体的事例
労災事故で、会社に対して、損害賠償請求をするためには、会社に安全配慮義務違反が認められることが要件となります。
安全配慮義務とは、労働者の生命・健康を危険から保護するように、会社が配慮する義務をいいます。
では、どのような場合に、会社に安全配慮義務違反が認められるのでしょうか。
会社に、労働安全衛生法令の違反が認められる場合、安全配慮義務違反が認められます。
具体的には、フォークリフトの場合、労働安全衛生規則151条の3において、作業場所、地形、機械の種類及び能力、荷物の種類及び形状に適合した運行経路及び作業方法を示した作業計画を定めて、関係労働者に周知させなければなりません。
また、労働安全衛生規則151条の4において、複数でフォークリフト作業を行う際は、作業指揮者を定め、作業計画に基づいて作業をしなければなりません。
そのため、会社が、フォークリフトを使用しているにもかかわらず、作業計画を作成していなかったり、作業指揮者を定めておらず、フォークリフトの労災事故が発生した場合、会社に安全配慮義務違反が認められる可能性があると考えます。
労働安全衛生規則の定め以外にも、フォークリフトの労災事故を防止する方法として、次のことが挙げられます。
① 構内でフォークリフトを使用するルール(制限速度、安全通路など)を定め、荷役作業を行う労働者の見やすい場所に掲示すること
② 通路の死角部分へのミラーの設置などを行うとともに、フォークリフトの運転者にこれらを周知すること
③ フォークリフトの走行場所と歩行通路を区分すること
④ 騒音作業環境にあったパトランプや走行ブザーによるフォークリフト走行時の警報装置を設けること
⑤ フォークリフトや荷物との接触禁止箇所への立入禁止、誘導者の配置、標識の設置などの接触防止措置を実施すること
会社が、このような労災事故を防止するための安全対策を怠っていた場合、安全配慮義務違反が認められて、労働者は、会社に対して、労災保険からの補償では足りない損害について、損害賠償請求をすることができることになります。
6 福崎法律事務所にできること
福崎法律事務所では、後遺障害認定、会社への損害賠償請求について、豊富な経験と実績がございます。ご相談者様のお話を丁寧にお伺いし、最善の解決策をご提案いたします。
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