自分のミスで怪我をしても、“労災”になります!
労災保険では、業務中、労働者自らのミス(過失)が原因でケガを負った場合であっても、給付金が支給されます。
過失の分だけ差し引かれる(過失相殺)こともありません。通勤中の災害についても同様です。
このように、労災保険は、被災者のミス・過失を問題としないのです。
その理由は?
労働者が働く現場には、多種多様な危険・リスクがあります。
弱い立場の労働者に危険のある業務を担わせ、これにより事業主は利益を得ているというのが社会構造です。
この社会構造下で、労働者自身のミスでケガを負った場合は補償を受けられないとか、ミスの分だけ補償から差し引くという国の制度では、働き手はいなくなってしまいます。
そこで、労働災害においては、被災労働者自身に過失・ミスがあったとしても補償されるように定められています。
故意や重過失の場合は別です
ただし、労働者が故意や重過失により労災事故を生じさせたり、正当な理由なく療養に関する医師の指示に従わないことにより回復を妨げた場合等は、労災保険が全額または一部給付されないことがあります(労働者災害補償保険法第12条の2の2第1項、第2項)。
労災給付ほしさに意図的に事故を起こす、あるいは休業を長引かせるために療養に関する医師の指示に従わない、といった場合まで保護する必要はないからです。
会社から「あなたのミスだから労災には該当しないよ」と言われた方へ
自分のミス・過失が原因でケガを負ったときに、会社の担当者や役員から「あなたのミスだから労災には該当しないよ」と言われた方は要注意です。
上記のとおり、自分にミスがあっても、労災保険は適用されます。これは法律の定めです。
つまり、「あなたのミスだから労災には該当しないよ」というのはウソなのです。
これは、「労災隠し」に該当することになります。
会社から労災に該当しないと言われたときの対処法
労災保険が適用されるかどうかを判断するのは、労働基準監督署です。
会社ではありません。
労災申請では会社から証明印をもらうことが原則型ではありますが、「あなたのミスだから労災には該当しないよ」という会社から証明印をもらえなくても、労働基準監督署への申請は可能です。
ただ、その後の手続を考えると、早い段階から、つまり、「あなたのミスだから労災には該当しないよ」と言われた段階から、弁護士に相談することをお勧めします。
お一人で悩まずに、まずは、お電話ください。
自分のミスによる労災でも、会社に対する損害賠償請求ができる場合もあります
会社に対する損害賠償
上記のとおり、自分にミス・過失があっても、労災保険は適用されます。
しかし、労災保険では、慰謝料(ケガによる慰謝料・後遺障害による慰謝料)や後遺障害による逸失利益の一部は補償されません。
会社側・使用者側に安全配慮義務違反が認められると、これらを請求することができます。
自分にミスがあっても
自分にミス・過失があっても同じであり、会社側に安全配慮義務違反が認められると、慰謝料や後遺障害による逸失利益の請求が可能です。
ただし、自分のミス・過失の割合により「過失相殺」がなされることがありますが、その割合は個別具体的な事案ごとにより異なりますので、弁護士にご相談ください。
自分にミスがあっても会社側にも安全配慮義務違反がある典型的なケース
以下に、自分にミスがあっても、会社側にも安全配慮義務違反がある典型的なケースを幾つかご紹介いたします。
機械が古くセンサーが作動していない。センサー機能がそもそもない。
「自分のミスで、機械に指を挟んでしまい、ケガをしてしまった。」という事案です。その機械には、センサーが付いていたでしょうか? 付いていても、正常に働いていたでしょうか?
センサー等の安全設備を正しく機能させることは、会社の安全配慮義務の一内容と言えます。
もしセンサーが付いていれば、もしセンサーが正常に機能していれば、労働者にミスがあったとしても、ケガをするという結果は生じなかったわけです。
となると、ここに会社側の安全配慮義務違反が認められることになります。
機械の故障
「機械が故障した。これを修理しようとして、あれこれいじっていたらケガをしてしまった。これって、自分のミスだからしょうがないですよね。」という事案です。
しかし、そもそも機械が正常に働くように維持管理するのは会社側の義務です。
機械を用いて作業する労働者は、機械が正常に働くことを前提として労働を提供しているわけですから、「機械が正常に働くこと」という前提が欠けることは、会社側の義務違反ということになります
同僚にもミスがある
「自分にもミスがあるのだけれど、ペアを組んだ同僚にもミスがあるんですよ。」という事案です。
同僚に対する会社の指導教育が不足していたという安全配慮義務違反が認められるケースがあります。
また、同僚の行為が不法行為(民法709条)に該当する場合があります。
この場合には、会社に対して使用者責任(民法715条)を追及することが可能です。
安全教育が施されていない
「自分のミスなんだろうけど、そもそも、それをしてはいけない、こうしなさい、という指導や教育を受けたことがない。」という事案です。
会社・事業主は、労働者が安全に労働できるよう、安全教育を施さなければなりません。「この機会はこのように使用してください」、「この場合には電源を切ってください」といった教育です。
また、張り紙等により、注意を喚起することも安全教育の一内容です。
こうした教育や注意喚起がなされていないということは、会社側が安全配慮義務を履行していない、安全配慮義務違反があるということです。
作業環境が安全ではない
「作業スペースが狭いので、もっと気をつけるべきでした。自分のミスだからしょうがないですよね。」という事案です。
そもそも、危険な業務(つまり、ケガをする可能性がある業務)を労働者に行わせる場合には、安全な作業環境にて行わせるべきです。
例えば、狭いスペースで、ケガのリスクがある作業を強いること自体、会社側に安全配慮義務違反があるわけです。
ただし、先ほど記載したとおり、被災労働者に故意・重過失がある場合には、労災保険が支給されないことがあります。
「故意」とはわざとケガをしたことですから分かりやすいですが、「重過失」はそのように評価されるか否かですから、ご自身では判断ができないかもしれません。弁護士にご相談ください。
会社への損害賠償を請求する方法
会社へ損害賠償を請求する場合、まず、上記のように、具体的事案に即して、会社は何をすべきであったか、という会社側の具体的な安全配慮義務を特定することになります。
そして、会社側にその義務違反があったことを主張し、証拠をもって立証することになります。
その上で、自分にもミス・過失はあったであろうが、「その割合は○割に過ぎないから、会社側は残りの△割について責任がある」と主張することになります。
こうした主張立証は、極めて技術的であり、裁判に精通した弁護士でなければなかなか困難です。
初回相談は無料ですので、安心してご相談ください。
後遺障害が残る場合は、弁護士に依頼すべき
会社に落ち度があるかどうかは、ご自身では判断が付きにくいと思います。
長年お世話になった会社ならば尚更です。
しかしながら、後遺障害は、一生消えることはありません。
数年後に後悔しても、その時には時効期間が経過して、もはや請求できなくなることもあり得ます。
「会社に安全配慮義務違反があるかどうか分からない。」、「自分のミスだけが原因ではないだろうか。」という方も、一度ご相談ください。
ぜひ弁護士にご相談ください
労災に遭ってしまいお困りの方は、ぜひ一度、弁護士にご相談ください。
ご自身にミスがあると思っていらっしゃる方も、ぜひご相談ください。
初回相談料は無料です。
お一人で悩まずに、まずは、お電話ください【03-6277-8802】。
メールやLINEでも相談可能です。