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「労災隠しについて」

労災隠しとは

事業者は、労働災害等により労働者が死亡又は休業した場合には、遅滞なく、「労働者死傷病報告」を労働基準監督署長に提出しなければなりません(労働安全衛生法第100条、労働安全衛生規則第97条)。
「労災隠し」とは、この「労働者死傷病報告」を、故意に提出しないこと、又は、虚偽の内容を記載して提出することをいいます。
労災隠しは、犯罪です。
厚生労働省も、労災隠しをしないように広く呼び掛けています。

労災隠しの罰則

(1)上記のとおり、労働災害等により労働者が死亡又は休業した場合には、事業者は、遅滞なく、「労働者死傷病報告」を労働基準監督署長に提出しなければなりません(労働安全衛生法第100条、労働安全衛生規則第97条)。
被災した労働者が、労災保険の給付請求を行い、労働基準監督署長が労災が発生したことを認識するところとなったとしても、これとは別に、事業者は労働者死傷病報告の提出を行う必要があります。つまり、労災保険の手続をしたことにより報告をしたということにはなりません。
 また、派遣労働者が派遣先で被災した場合には、派遣元事業者も派遣先事業者も、いずれもが、労働者死傷病報告の提出義務を負います。
(2)労働者死傷病報告の提出を怠った場合、又は、事実と異なる虚偽の報告をした場合には、50万円以下の罰金が課される(労働安全衛生法第120条5号)との罰則が定められています。

なぜ労災隠しをする事業者がいるのか(労災隠しを行う事業者の動機)

厚生労働省が労災隠しをしないように広く呼び掛けていることから分かるとおり、一定の数の労災隠しが依然として発生しています。
なぜ労災隠しを行うのか、その理由としては、次のようなことが考えられます。

・労災の調査によって、会社内部に存在する何らかの法律違反が発覚するのを避けたい
・加入すべき義務があるのに労災保険に未加入だった
・企業イメージを損ねてしまう
・無災害表彰の機会を逃す
・労災保険の申請手続きが面倒
・労災保険料が上がってしまう
・そもそも、会社側に、労災に関する知識がないという場合もあり得ます。

労災隠しをする会社の労働者へのセリフ

上記の労災隠しを行う事業者の動機は、労働者側からは分かりません。
労災隠しを行う事業者が、被災した労働者へ使うセリフとしては、以下のようなものが考えられます。
つまり、以下のことを言われたら、労災隠しの可能性が疑われるわけです。

「アルバイトやパートは労災保険が使えないよ」
~実際は、雇用形態問わず、アルバイト・パートでも労災保険の対象となります。
「治療費は健康保険を使ってください」
~労災による怪我や病気の場合には、健康保険は使えず、労災保険で治療費等をまかなうことになります。
「治療費は会社が負担します」
~最初のうちは治療費を支払ってくれるかもしれませんが、療養生活が長引いたり治療費が高額になってくると最後まで治療費を支払ってもらえなかったりする可能性があります。
「うちは労災保険に加入していない」
~労災保険は従業員をひとりでも雇っていると加入しなければならない強制加入の保険ですから、労災保険に入っていない可能性は限りなく低いです。万一、本当に労災保険に加入していなくても労災保険の請求は可能です。
「こんな怪我(病気)は労災にならないよ」
~労災に該当するかどうかを判断するのは労働基準監督署であり、会社ではありません。会社にこのようなことを言う権限はないのです。
「労災申請したら解雇するぞ」
~労働基準法では、労災により仕事を休んでいる間は解雇してはならないことになっています。労災申請したことを理由に労働者を解雇するようなら、不当解雇にあたります。

労災隠しのリスク

(1)事業者サイドのリスク

労災隠しを行うと、上記のとおり、罰金刑に処せられる可能性があります。
そして、コンプライアンスが重視される今日では、労災隠しというコンプライアンス違反を犯す事業者は、取引業者からも、社会からも、その信用を失います。そうなると、将来の事業の継続は困難なものとなってしまいます。

(2)労働者サイドのリスク

そもそも、労災保険での補償が受けられないというデメリットがあります。
労災保険には、以下の給付制度があります。
・療養(補償)給付
・休業(補償)給付
・障害(補償)給付
・遺族(補償)給付
・葬祭料(葬祭給付)
・傷病(補償)年金
・介護(補償)給付
・二次健康診断等給付
労災隠しがされてしまうと、こうした給付の機会を失うことになってしまうのです。

そして、上記のとおり、労災隠しを行うような事業者が将来も事業が継続できるとは限りません。その事業者の言いなりになる必要はないというのが私の考えです。

当事務所がサポートできること

業務によって怪我や病気をして会社を休むことになったら、ましてや、会社から「労災保険を使うな」と言われたら、「ここで会社と対立したら、解雇されるのではないか」と先行きがとても不安になるものです。
しかし、上記のとおり、労災隠しを行うような事業者の言いなりになる必要はありません。
かつ、繰り返し述べたとおり、労災隠しは犯罪です。犯罪を犯す事業者に付き合う必要はありません。
当事務所では、そのような事業者としっかりと対峙します。
安心して、当事務所にご相談ください。