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製造業における工場等での労災事故

 労災事故には、業種によって顕著な特徴があります。
 製造業は、労災の発生件数が全業種の中で最も多く、機械を使うという特色から重大事故が起きやすい業種です。
 以下に詳しく説明いたします。

製造業の労災の特徴

絶対数

製造業は、何を製造するかにもよりますが、機械を使うことが非常に多い職種で、それだけ危険性が高いといえます。
そのため、製造業における労災事故(休業4日以上)は全業種の中で最も多く、全産業の労災の約20%を占めます。
「令和5年 労働災害発生状況」(厚生労働省労働基準局)によると、休業4日以上の死傷者数は、
・全産業 135,371人
・製造業 27,194人(約20%)
・陸上貨物運送事業 16,215人(約12%)
・建設業 14,414人(約11%)
 であり、製造業が群を抜いて多いことが分かります。

事故の類型

製造業での事故の類型で最も多いのは、機械等への「はさまれ・巻き込まれ」です。
「令和5年労働災害発生状況の分析等」(厚生労働省)によると、
「はさまれ・巻き込まれ」の割合は、死亡者数で32.6%(45人)、死傷者数で18.0%(4,908人)にものぼります。
手や足など仕事に直結するところを怪我することが多く、休業が必要となることが多くなります。
かつ、機械の力を身体に受けてしまう結果、重篤な怪我となる場合が多く、そのために後遺障害が残ってしまうことが多いため、適切な補償を受けることが重要になるといえます。

もう一つの特徴(事業者の責任)

事業者(会社)の安全配慮義務違反が問題になることが多いという点も製造業での労災事故の特徴です。
会社は、労働者に対して、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする義務、すなわち「安全配慮義務」があります(労働契約法5条)。
会社側のこの義務違反に起因して労働者が怪我をした場合は、被災した労働者は、債務不履行として会社に対して損害賠償請求をすることができます。
上記のとおり、製造業では様々な機械を使用することが多く、その多くは適切に使用しなければ重大な事故につながるものです。
そのため、法令(労働安全衛生法及び安全衛生規則等)では様々な規定を設けて、安全対策や安全教育を適切に行うよう規制しています。
しかし、実際には機械の不備・故障、安全対策・安全教育の不備等が原因となって、多くの労災事故が起こってしまっています。
このような場合には、安全配慮義務違反として、会社に対して損害賠償請求をすることができます。

労災に遭った時に行うべきこと

まず、労災保険を申請しましょう。

労災保険では、治療に要する費用の給付(療養補償給付)、休業に関する給付(休業補償給付)、後遺障害に関する給付(障害補償給付)等を受けることができます。

しかし、事業者(会社)に安全配慮義務違反がある場合には、この労災保険以外にも、会社に対して、損害賠償を行うことができます。

言い換えるならば、労災保険だけでは十分な補償がなされているとは言えないわけです。
具体的には、怪我を負ったことによる慰謝料、後遺障害が残ったことによる慰謝料、後遺障害による逸失利益等が挙げられます。

手足の切断と後遺障害の認定基準

例えば、労災事故により手が切断されてしまった事故を想定してみます。

ヒジ関節以上で失った場合は後遺障害第4級、ヒジ関節以下で失った場合は後遺障害第5級となります。

労災保険での障害補償給付では、第4級の場合は給付基礎日額213日分の年金が、第5級の場合は給付基礎日額の184日分の年金が給付されます(その他に障害特別一時金、障害特別支給金の給付もあります)。

しかし、労災保険では「慰謝料」は給付されません。

慰謝料とは精神的損害を意味し、怪我をしたことによる精神的損害と、後遺障害を負ったことによる精神的損害が挙げられます。労災保険では、この精神的損害は補償されないのです。
後遺障害による労働能力喪失(後遺障害を負ったことにより、これまでと同じような仕事ができなくなる、結果、収入が減ること)も、労災保険ではカバーしきれません。
こうした損害については、事業者(会社)に対して、安全配慮義務違反(または使用者責任の不法行為)を検討する必要があるわけです。

ケガの程度と等級の目安

例えば、手の指が失われたわけではないけども、動かなくなった・曲がらなくなった(運動障害)場合を想定してみます。

障害等級表では、以下のように分類されています。
・1手の5の手指又は母指を含み4の手指の用を廃したもの→第7級(7号)
・1手の母指を含み3の手指又は母指以外の4の手指の用を廃したもの→第8級(4号)
・1手の母指を含み2の手指又は母指以外の3の手指の用を廃したもの→第9級(9号)
・1手の母指又は母指以外の2の手指の用を廃したもの→第10級(6号)
・1手の示指、中指又は環指の用を廃したもの→第12級(9号)
・1手の小指の用を廃したもの→第13級(4号)

ここで、「用を廃したもの」とは、例えば、手指の関節に一定の可動域制限が生じた場合や、手指の第一関節より先の感覚が完全に失われた場合などを指します。

指が切断(失われた)場合は外観上明らかですが、「用を廃したもの」の認定は外観上明らかというわけではありません。
そのため、本来認められるべき等級よりも軽い等級認定となってしまうという可能性も考えられるのです。

後遺障害が残った場合当事務所ができること

等級認定に当たっては、弁護士に依頼すれば、後遺障害の等級認定のサポートもすることができるので、労災保険で不利益を受けることもなくなります。
より重い等級での認定を勝ち取ることは、その後に会社へ損害賠償請求をするに際しても決定的に重要なことです。
早い段階で弁護士にご相談ください。

弁護士への相談を

製造業で労災事故に遭った場合には弁護士に相談することをお勧めします。

その理由は、
・どのような請求が可能かの判断ができる
・どのような請求が可能かを知ることができる
例えば、労災に被災したにもかかわらず、労災隠しに遭っている場合に、労災保険の給付を請求できるのかの判断ができます。
また、会社(派遣先、派遣元)に対して安全配慮義務違反についての追及が可能かの判断ができます。
・会社との交渉や法的手続きを任せる
弁護士に依頼すれば、会社との交渉や法的手続を任せることが可能です。
労働者が一人で会社と交渉するのは、立場や知識などから極めて不利であり、適切な補償を受けられなくなる可能性があります。
また、訴訟等の法的手続を自ら行うのは非常に困難です。
弁護士に依頼すれば、これらを任せることができます。

機械を使うという特性から、労災が非常に多い業種である製造業では、労災認定をされても十分に損害の補填ができない可能性があります。

会社に安全配慮義務違反がある場合には、労災保険ではカバーできない損害について請求することが可能なので、まずは弁護士に相談してみてください。
ご相談は、電話でもメールでもLINEでも可能で、いずれも無料です。ご相談はこちらです。